【2026年5月が期限】医療DX推進体制整備加算の算定要件が厳格化!医事課がやるべき実務対応とは

「加算の要件、また変わったの…?」

医療DX推進体制整備加算を算定している医事課の方なら、最近こんなため息が出ているのではないでしょうか。

2024年の診療報酬改定で新設された「医療DX推進体制整備加算」ですが、2025年10月から算定要件が段階的に厳格化されており、さらに2026年5月までに対応しなければならない項目があることをご存知でしょうか。

特に注目すべきは以下の3点です。

【ポイント①】マイナ保険証利用率の基準が段階的にアップ
  • 2025年10月~2026年2月:加算1は45%、加算2は30%、加算3は15%
  • 2026年3月~5月:加算1は70%、加算2は50%、加算3は30%
【ポイント②】電子カルテ情報共有サービスの経過措置は2026年5月末まで
  • それまでに対応体制を整備する必要がある
  • 本格運用は2026年度冬頃を予定
【ポイント③】電子処方箋への対応(加算1~3のみ必須)
  • 発行・登録・調剤結果登録の体制整備が必要
  • 電子処方箋の普及率:薬局86.5%、医科診療所23.3%、病院17.3%(2025年11月時点)

中央社会保険医療協議会(中医協)では、
「マイナ保険証が基本となった今、この加算は役割を終えた」として廃止を求める支払側(健康保険組合連合会など)と、「医療DXには膨大なコストがかかっており、むしろ評価を引き上げるべき」とする診療側(日本医師会など)で激しい議論が交わされています。

引用元記事はこちら】

目次

医事課・院内SE(医療情報技師)への影響・ポイント

なぜ医事課・院内SEが今すぐ動くべきなのか

「医療DXの話は経営陣や情報システム部門の話でしょ?」
そう思っている医事課の方、それは危険です。算定要件を満たせなければ、毎月の加算収入がゼロになります医療DX推進体制整備加算の点数は以下の通りです。

加算区分初診再診
加算19点2点
加算27点2点
加算35点2点
加算43点1点
加算52点1点
加算61点なし

一見小さな点数に見えますが、初診・再診患者が多い医療機関では月間数十万円規模の収入になります。
これを失うインパクトは小さくありません。

【医事課への影響①】マイナ保険証利用率の管理が必須に

最も大きな影響は、マイナ保険証利用率の継続的な管理です。現状の利用率を把握していますか?
2025年10月以降の算定要件は以下の通りです。

■ 2025年10月~2026年2月

  • 加算1・4:45%以上
  • 加算2・5:30%以上
  • 加算3・6:15%以上

■ 2026年3月~5月

  • 加算1・4:70%以上
  • 加算2・5:50%以上
  • 加算3・6:30%以上

これらの数値は、前年または前々年の実績に基づいて判定されます。

つまり、2026年3月から適用される70% / 50% / 30%の基準は、2025年12月までの実績で判定されるということです。
「もう時間がない」状況なのです。

医事課がやるべき実務
  1. 現在の利用率を月次で集計する仕組みを作る
    • レセコンや電子カルテから「マイナ保険証利用件数÷総受診件数」を算出
    • エクセルやレセコンの集計機能を活用
    • 月次で推移を追跡し、基準値を下回りそうになったら早期にアラートを出す

  2. 窓口スタッフへの周知徹底
    • 「マイナ保険証をお持ちですか?」の声掛けを徹底
    • カードリーダーの操作方法を全員が理解しているか確認
    • 顔認証エラー時の対応フローを整備

  3. 患者への案内強化
    • 待合室にポスター掲示
    • 予約時・受付時にマイナ保険証利用をお願いする
    • 「マイナ保険証を使うメリット」を分かりやすく説明できる資料を用意

  4. 経営層への定期報告
    • 月次の利用率と目標値の達成状況を報告
    • 基準未達のリスクと対策を共有

【医事課への影響②】電子カルテ情報共有サービスへの対応

2026年5月末までに、電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を整える必要があります。

「電子カルテ情報共有サービスって何?」という方も多いかもしれません。
簡単に言えば、全国の医療機関で患者の診療情報を共有できる仕組みです。
2026年度冬頃に本格運用が開始される予定です。

医事課がやるべき実務
  1. 自院の電子カルテベンダーへの確認
    • 電子カルテ情報共有サービスに対応しているか
    • 対応するためのシステム改修が必要か
    • 改修費用と時期はどうなるか

  2. 院内SEや情報システム部門との連携
    • システム改修のスケジュール確認
    • 操作研修の実施時期の調整
    • テスト運用の計画

  3. 運用ルールの策定
    • どの情報を共有するのか(診療記録、検査結果、処方内容など)
    • 患者への説明と同意取得の方法
    • 情報閲覧のアクセス権限設定

  4. スタッフ教育
    • 電子カルテ情報共有サービスの意義と使い方
    • 患者からの問い合わせ対応マニュアル

【院内SEへの影響】システム対応と連携業務が増加

院内SEにとっては、複数のシステム改修・連携が同時に求められる厳しい状況です。

想定される業務負荷
  1. 電子カルテ情報共有サービスへの対応
    • 電子カルテベンダーとの調整
    • システム改修の実施・検証
    • セキュリティ対策の強化

  2. 電子処方箋システムの運用管理
    • 医薬品マスタの適切な設定
    • 厚生労働省チェックリストによる点検
    • 医療機関等向け総合ポータルサイトへの報告

  3. マイナ保険証利用率データの抽出・集計
    • レセコンからのデータ抽出
    • 月次レポートの自動化
    • 医事課への情報提供

  4. サイバーセキュリティ対策の強化
    • BCPの策定と訓練
    • オフラインバックアップの実施
    • 情報セキュリティ責任者の配置(診療録管理体制加算1の要件)
院内SEがやるべき実務
  1. 優先順位の明確化
    • 2026年5月までに「絶対に対応しなければならないもの」をリスト化
    • 予算・人員・時間のリソース配分を経営層に提案

  2. ベンダーとの早期コミュニケーション
    • 改修内容・費用・納期の確認
    • 複数ベンダーが関わる場合の調整

  3. 医事課との密な連携
    • マイナ保険証利用率のデータ抽出方法の確立
    • トラブル時の対応フロー整備

よくある現場の悩みと対策

「マイナ保険証を使わない患者が多い」

対策:
 ● 「使うメリット」を具体的に説明する
   ・「より安全な治療が受けられます」
    ・「限度額認定証が不要になります」

 ● 待合室で利用シーンを動画で流す

 ● 予約時・受付時の声掛けを徹底

「カードリーダーのエラーが多くて窓口が混雑する」

対策:
 ● 顔認証エラー時の対応フローを明確化
   ・「暗証番号での認証」または「保険証の確認」に素早く切り替える

 ● 受付全員がエラー対応できるよう研修

 ● 機器の設置場所・照明の見直し

執筆者のコメント

私が働く医療機関では、2024年の診療報酬改定で医療DX推進体制整備加算の届出を行い、算定を開始しました。

マイナ保険証の利用率については、当初は10%程度でしたが、窓口での声掛けを徹底し、現在は45%前後まで上がってきました。

特に高齢の患者さんが多い診療所では、「マイナ保険証を持っていない」「持っているけど使い方が分からない」という方も多く、窓口での説明に時間がかかります。カードリーダーの顔認証エラーも頻発し、「やっぱり保険証の方が早い」と言われることも多いです…。

でも、ここで諦めるわけにはいきません。

医療DX推進体制整備加算は、単なる「収入源」ではなく、今後の医療DXの流れに乗り遅れないための重要な体制整備だと思っています。

電子カルテ情報共有サービスや電子処方箋が普及すれば、他院の情報を把握でき、重複投薬や禁忌薬の投与を防げます。これは患者さんにとっても大きなメリットです。

医事課としては、「目の前の算定要件をクリアする」ことに精一杯になりがちですが、
その先にある「患者のための医療DX」を見据えて取り組むことが大切だと思います。

中医協での激しい議論をどう見るか

中医協では、支払側(健康保険組合連合会など)が「マイナ保険証が基本となった今、この加算は役割を終えた。廃止すべき」と主張しています。

一方、診療側(日本医師会など)は「医療DXには膨大なコストがかかっている。
導入だけでなく、維持・管理のコストも診療報酬で評価すべき」と反論しています。

現場で働く私たちの実感としては、診療側の主張の方がリアルです。

電子カルテベンダーは毎年のように「システム改修費」「保守料金の値上げ」を提示してきます。クラウド型のシステムは月額課金なので、ランニングコストが永続的にかかります。

「オンライン資格確認の運営経費は保険者が負担しているのだから、診療報酬で評価するのは二重取りだ」という支払側の主張も理解できますが、医療機関側にも端末設置・ネットワーク整備・スタッフ教育などの実費がかかっているのは事実です。

今後の診療報酬改定で、この加算がどうなるかは不透明です。ただ、今できることは、現行の要件を確実にクリアし、算定を継続すること。それだけです。

まとめ:今からやるべき3つのアクション

【① マイナ保険証利用率を毎月チェック】

【マイナ保険証利用率を毎月チェック】

今すぐやるべきこと:

  • 現在の利用率を算出する(過去3か月分)
  • 目標値(2026年3月以降の基準)とのギャップを把握
  • 月次で推移をモニタリングする仕組みを作る

担当者を決める:

  • 医事課内で「医療DX担当」を明確にする
  • 毎月5日までに前月の利用率を集計・報告する

目標未達の場合の対策:

  • 窓口での声掛け強化
  • ポスター・チラシでの案内
  • 予約時の事前案内
  • 高齢患者向けの丁寧な説明資料作成

【② 2026年5月までのスケジュールを作る】

【2026年5月までのスケジュールを作る】

電子カルテ情報共有サービスへの対応:

  • 1月中:ベンダーへの確認・見積取得
  • 2月中:システム改修の発注・予算確保
  • 3~4月:改修作業・テスト運用
  • 5月:本運用開始

電子処方箋への対応(加算1~3算定の場合):

  • チェックリストによる点検実施
  • 医療機関等向け総合ポータルサイトへの報告

【③ 院内の連携体制を強化する】

医療DX推進は、院内SE・医事課だけでは完結しません。

【院内の連携体制を強化する】

連携すべき部門:

  • 院内SE・情報システム部門:システム改修・データ抽出
  • 事務部門・受付:マイナ保険証の案内・カードリーダー操作
  • 医師・看護師:電子カルテ情報共有サービスの活用方法
  • 経営層:予算確保・方針決定

定期的な進捗共有:

  • 月次で「医療DX推進会議」を開催
  • 利用率の推移・課題・対策を共有
  • 各部門の役割分担を明確化

さいごに

医療DX推進体制整備加算の算定要件は、今後も変化し続ける可能性があります。

「また変わるの…?」と嘆きたくなる気持ちも分かりますが、これは医療の未来を作るための大きな転換点です。

今は大変でも、数年後には「あの時、ちゃんと対応しておいて良かった」と思える日が来るはずです。

まずは、2026年5月までの対応を確実に。そして、マイナ保険証利用率の目標達成を
一つ一つ、着実に進めていきましょう。

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