【院内SE必読】ベンダー選定で失敗しない!電子カルテ・医療システム導入で「後悔した病院」の5大共通点と対策

「最安値のベンダーを選んだら、導入後に追加費用が雪だるま式に増えた」「大手メーカーだから安心と思ったら、医療現場の業務フローを全く理解していなかった」――電子カルテや医療情報システムのベンダー選定で、こんな後悔をした病院は少なくありません。

IT業界全体では、プロジェクトの失敗原因の約35%が「不適切なベンダー選定」に起因すると言われています(Gartner調査)。しかし、医療機関特有の制約――24時間365日の稼働要件、医療法や個人情報保護法への対応、限られた予算――を考えると、失敗のコストは一般企業よりはるかに大きいのです。

今回は、実際にベンダー選定で失敗した病院の事例から導き出した「5大共通点」と、院内SEとして押さえるべき具体的な対策を徹底解説します。次回のシステム更新で同じ轍を踏まないために、参考にしてみてください。

目次

医療機関のベンダー選定ミスが急増している背景

2026年現在、医療機関を取り巻くIT環境は激変しています。

【最新動向】

● 電子カルテの普及率: 病院77.7%、診療所71.0%(2026年1月時点)

● 医療DX推進体制整備加算: 2026年5月までに段階的に厳格化

● 電子処方箋: 2025年6月時点で薬局の8割が運用開始済み

● 標準型電子カルテ: 2026年度に共通算定モジュールが本格提供予定

このように、医療DXの波が押し寄せる中、多くの病院が「とにかく何かシステムを入れなければ」と焦ってベンダー選定を進めています。しかし、急いで選んだベンダーが「医療現場を熟知していない」「サポート体制が脆弱」だった場合、導入後に取り返しのつかない混乱を招きます。

実際、あちこちで起きているシステム障害もシステム選定とベンダー管理の課題が背景にあると指摘されています。

また、2026年1月16日の日経新聞では「人月商売からAI活用へ」という記事が掲載され、従来の「とりあえず人海戦術で開発する」スタイルのベンダーではなく、AIやクラウドを活用して効率化できるベンダーを選ぶ重要性が強調されています。

つまり、2026年以降の医療システム導入では、「ベンダー選定力」が院内SEの最重要スキルになっているのです。

失敗した病院の5大共通点と具体的対策

実際にベンダー選定で失敗した医療機関の事例を分析すると、驚くほど共通したパターンが浮かび上がります。以下、院内SEが絶対に避けるべき5つの落とし穴と、その対策を解説します。

①「安さだけで選ぶ」―― 初期費用の罠にハマる

失敗事例: C県のB病院(200床)
電子カルテの更新時、3社の見積もりのうち最安値(初期費用3,000万円)のベンダーを選定。しかし、導入後に「オンライン資格確認との連携は別料金」「レセプトチェック機能は追加開発」「サーバー保守は年間契約」と次々に追加費用が発覚し、最終的に当初見積もりの
2.5倍(7,500万円)に膨張

なぜ失敗したのか?

医療システムの見積もりには「含まれているもの/いないもの」の境界が曖昧なケースが多く、初期費用だけで判断すると必ず失敗します。特に以下の項目は要注意です。

〜 ベンダーと院内SEの思う「当たり前」の認識を統一するのが大事 〜

● オンライン資格確認端末との連携費用

● 既存システム(検査機器、画像システム等)とのインターフェース開発費

● データ移行費用(旧システムからの患者データ移行)

● 職員向け操作研修費用

● 保守・サポート費用(年間契約 vs 都度課金)

院内SEがやるべきこと:

●  TCO(総所有コスト)で比較する
   初期費用+5年間の運用・保守費用+想定されるカスタマイズ費用を合算して比較

● 「追加費用が発生しない範囲」を契約書に明記させる
   例: 「オンライン資格確認、電子処方箋、レセプト電算への対応は初期費用に含む」

 「隠れコスト」チェックリストを作る
  データ移行、職員研修、ネットワーク工事、予備サーバー、バックアップ体制など

②「大手だから安心」―― 医療現場を熟知していないベンダーの悲劇

失敗事例: D県の総合病院(400床)
「メーカーがF社なら安心」と大手メーカーの電子カルテを導入したが、実際の開発・保守は下請けSIerが担当。医療現場の業務フローを理解しておらず、「外来の問診票入力が紙カルテより遅い」「看護記録の記載項目が実情に合わない」とクレームが続出。結局、院内SEが業務フローを変更する羽目に。

なぜ失敗したのか?

大手ベンダーの場合、営業は本社だが、実際のシステム構築は地方の協力会社やSIerが行うケースが多いです。その協力会社が「医療現場の知識が低レベル」だった場合、カタログスペックは立派でも、現場で使えないシステムになります。※「えっ。そんなことも知らないの・・・」が意外とあります。

院内SEがやるべきこと:

 「実際に誰が開発・保守するのか」を契約前に確認
  営業担当だけでなく、実際のプロジェクトマネージャーとSEに会って面談する

● 類似規模の病院での導入実績を必ず確認
  パンフレットの事例紹介だけでなく、導入業者の評判をリサーチする

 「医療情報技師」の有資格者が何人いるか確認
  医療とITの両方を理解している人材がいるかは、ベンダーの質を測る重要指標

③「要件定義を丸投げ」―― ベンダー任せで後悔

失敗事例: E県のクリニック(有床診療所)
「電子カルテのことは分からないから、ベンダーさんにお任せします」とRFP(提案依頼書)を作らず、ベンダーの提案をそのまま受け入れた。導入後、「入院患者の食事オーダーが連携できない」「リハビリ記録が別システム」と判明し、追加開発に500万円が必要に。

なぜ失敗したのか?

医療機関側が「何が欲しいか」を明確にしないと、ベンダーは自社の得意分野(=売りたい商品)を提案します。その結果、病院の業務フローに合わないシステムが納品されます。

院内SEがやるべきこと:

● 簡易版でもRFP(提案依頼書)を作成する
  自院の課題、解決したいこと、必須機能、予算、スケジュールを文書化


● 現場の声を集める「要件ヒアリングシート」を作る
  医師・看護師・医事課・薬剤部など各部署の困りごとを事前に収集


「デモ環境での業務シミュレーション」を契約条件に入れる
  導入前に、実際の業務フローでシステムが動くか検証する機会を確保

④「サポート体制を確認しない」―― 障害時に迅速な対応ができない

失敗事例: F県の精神科病院(150床)
格安クラウド型電子カルテを導入したが、サポートはメール受付のみ。ある日、システム障害でカルテが開けなくなり、メールで問い合わせたが返信は翌日。その間、紙カルテでの運用を余儀なくされ、診療が大混乱。

なぜ失敗したのか?

医療機関は24時間365日稼働が前提です。しかし、ベンダーのサポート体制は「平日9時〜17時」「電話は営業時間のみ」といった制約がある場合が多く、夜間・休日の障害対応が遅れると患者の安全にも影響します。

院内SEがやるべきこと:

●  SLA(サービスレベル契約)に「障害時の対応時間」を明記
   例: 「重大障害は30分以内に一次対応、4時間以内に復旧着手」


● 夜間・休日のサポート体制を契約書に盛り込む
  オンコール対応の有無、緊急連絡先、代替手段(リモート復旧等)を確認


●  年1回の「障害対応訓練」をベンダーと実施
  実際に障害が起きた想定で、連絡フロー・復旧手順を事前にリハーサル

⑤「契約書を読まない」―― 責任の所在が不明確

失敗事例: G県の回復期リハビリ病院(120床)
電子カルテ更新時、契約書の細部を確認せず署名。導入後、「データバックアップの頻度は月1回」「障害時の責任はベンダーにない(免責条項)」と判明。結局、院内SEが自力でバックアップ体制を構築する羽目に。

なぜ失敗したのか?

医療システムの契約書には「瑕疵担保責任」「データ所有権」「障害時の補償」など重要条項がありますが、専門用語が多く、経験が浅い院内SEだけで読み解くのは困難な場合もあります。しかし、契約書にサインした瞬間、後戻りはできません

院内SEがやるべきこと:

●  契約書の重要項目を法務担当(または顧問弁護士)に確認してもらう
  特にチェックすべき項目: 納品物の定義、検収条件、瑕疵担保責任、データ所有権、SLA


●  「データ移行時のトラブル責任」を明記させる
  旧システムからのデータ移行でミスがあった場合、誰が責任を負うか事前に合意


「契約解除条件」も確認する
  万が一、ベンダーが約束を守らなかった場合の解約ペナルティや乗り換え支援策

執筆者コメント

「ベンダー選定は結婚相手選びと同じ」―― 失敗経験から学んだこと

過去に中規模病院の院内SEとして電子カルテのベンダー選定に関わった際、「最安値の提案」に飛びついて大失敗した経験を知人から聞いたことがあります。

当時、理事長から「予算が限られているから、なるべく安く」と指示され、3社の見積もりのうち最安値のベンダーを選びました。しかし、導入後に「画像システムとの連携は追加費用」「職員研修は別途有料」「データ移行に想定外の時間がかかり、追加人件費発生」と次々に問題が噴出。最終的に、当初見積もりの1.8倍のコストがかかり、経営陣から厳しく叱責されました。

その失敗から学んだのは、「ベンダー選定は結婚相手選びと同じ」だということです。

初期費用の安さ(=見た目の良さ)だけで選ぶと、一緒に暮らし始めてから(=導入後に)「こんなはずじゃなかった」と後悔します。本当に大切なのは、長期的に信頼関係を築ける相手かどうかです。

特に医療機関の場合、電子カルテは一度導入すると5〜10年は使い続けます。その間、法改正(診療報酬改定、医療法改正等)やシステム障害など、数々の困難に直面します。そのとき、ベンダーが「一緒に問題を解決してくれるパートナー」か、それとも「契約書に書いてないから知りません」と逃げる相手かで、院内SEの仕事のストレスは天と地ほど変わります。

もう一つ、院内SEとして痛感したのは、「ベンダー選定は院内SEの評価に直結する」という現実です。

システム導入がうまくいけば「当たり前」、失敗すれば「なぜ事前に見抜けなかったのか」と責められます。だからこそ、今回の記事で紹介した5つの共通点と対策を、ぜひ次回のベンダー選定に活かしてください。

最後に、院内SE仲間へのアドバイスです。「孤独に判断しない」こと。ベンダー選定は、院内SEだけで抱え込むには荷が重すぎます。医師・看護師・医事課・経営陣を巻き込み、「病院全体でベンダーを選ぶ」体制を作ることが、失敗を避ける最大の防御策です。

まとめ

ベンダー選定は「コスト削減」ではなく「長期投資」と考えよ

電子カルテや医療情報システムのベンダー選定で失敗した病院の5大共通点を振り返ります。

【5大共通点と対策】

● 安さだけで選ぶ → TCOで比較し、隠れコストをチェックリスト化

● 大手だから安心 → 実際の開発・保守担当者に会い、医療現場の経験を確認

● 要件定義を丸投げ → 簡易版でもRFPを作成し、現場の声を集める

● サポート体制を確認しない → SLAに障害対応時間を明記し、訓練を実施

● 契約書を読まない → 法務担当に確認し、責任の所在を明確化

ベンダー選定は「コスト削減」のためではなく、「今後5〜10年の業務効率と患者安全を左右する長期投資」です。初期費用を数百万円ケチった結果、導入後に何千万円もの追加費用が発生したり、システム障害で診療が止まったりすれば、本末転倒です。

院内SEがやるべきこと:

●  過去の導入事例を訪問し、生の声を聞く

●  RFPのテンプレートを作成し、次回の更新に備える


契約書のチェックリストを法務担当と共有する


ベンダーとの定期的なレビュー会議を設定し、関係性を維持する

「うちの病院は予算がないから、安いベンダーで妥協するしかない」と諦めていませんか?

しかし、失敗して追加費用が雪だるま式に増えれば、結局は高くつきます。むしろ、初期投資をしっかり行い、長期的にコストを抑えられるベンダーを選ぶ方が、経営的にも合理的です。

次回のシステム更新では、ぜひ今回の記事を参考に、「失敗しないベンダー選定」を実現してください。あなたの病院の未来と、院内SEとしてのキャリアがかかっています。

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