【レセプト返戻・査定を減らす】医療事務が今すぐできる5つの実践テクニック

「また返戻だ…今月何件目だろう」
「査定が多くて先生に怒られた…」
医療事務の仕事で、最も頭を悩ませるのがレセプトの返戻・査定ではないでしょうか。
返戻率は平均1~2%、査定率は平均3~5%と言われていますが、実際にはもっと高い医療機関も少なくありません。返戻・査定が多いと、再請求の手間が増えるだけでなく、医療機関の収入減に直結します。
「もっと返戻・査定を減らせたら…」
「でも、どうすればいいのか分からない」
そんな悩みを抱える医療事務スタッフのために、今回は現場ですぐ実践できる返戻・査定を減らす5つのテクニックを解説します。
返戻と査定の違いを理解しよう
まず基本を確認しましょう。
| レセプト返戻 | レセプト査定 | |
|---|---|---|
| 定義 | レセプトの記載内容に不備があり、医療機関に差し戻されること | レセプトの記載内容が不適当と判断され、診療報酬が不支給または減額されること |
| 再請求 | 可能 | 原則不可(ただし再審査請求は可能) |
| 影響 | 再請求の手間が発生 | 収入が減る |
返戻は修正して再請求できますが、査定は原則として収入が減ってしまいます。
したがって、査定を防ぐことが医療機関経営にとって非常に重要です。
返戻・査定の主な理由と実務への影響
返戻・査定が起こる8つの主な理由
審査支払機関(支払基金・国保連合会)は、返戻・査定の理由を以下のように分類しています。
【診療内容に関するもの】
| 分類 | 内容 | よくある具体例 |
|---|---|---|
| A | 医学的に適応と認められないもの | ・病名が間違っている ・適応外の薬剤処方 |
| B | 医学的に過剰・重複と認められるもの | ・薬剤の過剰投与 ・同じ検査の重複実施 |
| C | A・B以外の医学的理由により適当でないもの | ・投与期間制限を超えた長期処方 ・診療内容の一貫性欠如 |
| D | 算定要件に診療行為が合致しないもの | ・併算定不可の項目を同時算定 ・届出なしで特定加算を算定 |
【事務上に関するもの】
| 分類 | 内容 | よくある具体例 |
|---|---|---|
| F | 固定点数が誤っているもの | ・初診料・再診料の点数ミス ・公費負担医療の計算ミス |
| G | 請求点数の集計が誤っているもの | ・手入力の計算ミス ・レセコンの処理エラー |
| H | 縦計計算が誤っているもの | ・「投薬」「処置」の合計欄の間違い |
| K | その他 | ・上記に該当しない事務的不備 |
返戻・査定が多いとこんな悪循環が生まれる
・ 返戻レセプトの修正作業に追われる
・ 他の患者さんのレセプト点検が疎かになる
➡︎ さらに返戻・査定が増える悪循環
・ 査定による減収が積み重なる
・ 収益悪化により人員配置が削減される
・ スタッフ一人あたりの業務負荷が増える
・ ミスが増えて査定も増える
・ 医師や事務長から責められる
・ 「どうせまた返戻になる」という諦めムード
・ 丁寧な点検をしなくなる
今すぐできる!返戻・査定を減らす「5つ」の実践テクニック

【① 病名漏れを徹底的に防ぐ】
返戻・査定の理由で最も多いのが「病名漏れ」です。
検査や処置、投薬を行ったのに、それに対応する病名が登録されていないと、「医学的適応がない」として査定されてしまいます。
処方箋・検査オーダーと病名を必ずセットで確認
・ 新しい薬が処方されたら、その薬に対応する病名があるか即座にチェック
・ 検査が追加されたら、その検査の適応病名を確認
「症状」のみの病名を避ける
・ ❌ 悪い例:「頭痛」だけ
・ ⭕ 良い例:「緊張型頭痛」など具体的な病名を入力
レセプト点検時に「病名と診療行為の対応表」を使う
・ 例:「血液検査のHbA1c → 糖尿病の病名が必要」
・ 自院でよく使う検査・処置と対応病名をリスト化
■ 実例
ケース: 高血圧の患者さんにビタミンB12製剤を処方
問題: 「高血圧」の病名しかない
対策: 「末梢神経障害」など、ビタミンB12製剤の適応病名を追加
【② 算定漏れをゼロにする仕組みを作る】
算定漏れは、医療機関にとって「取れるはずの収入を逃している」状態です。
■ よくある算定漏れ項目
| 項目 | 算定漏れの理由 | 対策 |
|---|---|---|
| 外来管理加算 | 「時間がなくて算定し忘れた」 | 自動算定設定の活用 |
| 特定疾患療養管理料 | 「対象患者かどうか分からない」 | 対象患者リストの作成 |
| 在宅時医学総合管理料 | 「訪問診療の算定要件が複雑」 | 算定チェックリストの作成 |
| 外来迅速検体検査加算 | 「オーダーの見落とし」 | 算定時の確認項目(確認順)のルール制定 |
「算定漏れチェックリスト」を作る
・ 月末のレセプト点検時に全患者分をチェック
例:「特定疾患療養管理料の対象患者で、今月算定していない人はいないか?」
レセコンの自動算定機能を活用
・ 外来管理加算、薬剤情報提供料など、自動算定できるものは設定する
自動算定の条件設定は正確に!!必要に応じて保守業者に依頼しましょう。
医師への確認フローを確立
・ 月初に対象患者リストを医師と確認する
収益に関わることなので、積極的に医師とコミュニケーションをとりましょう。
【③ダブルチェック体制を整える】
「自分一人で点検すると、どうしてもミスが出る」
これは当然のことです。人間である以上、ヒューマンエラーは避けられません。だからこそ、ダブルチェックが重要です。
レセプト作成者と点検者を分ける
・ 自分が作ったレセプトを自分でチェックしない
・ 必ず別の人が確認する
点検の「視点」を変える
・ 1次チェック:形式的な不備(計算ミス、入力ミスなど)
・ 2次チェック:医学的妥当性(病名と診療行為の整合性など
紙レセプトでの最終チェック
・ PCの画面だけでなく、紙に印刷して最終確認
・ 紙にすると見落としに気づきやすい
【④過去の返戻・査定を「宝の山」にする】
「また同じミスで返戻になった…」
これ、実は一番もったいないパターンです。過去の返戻・査定情報は、自院の弱点を教えてくれる貴重なデータなのです。
「返戻・査定台帳」を作る
月次で「返戻・査定ミーティング」を開催
・ 今月の返戻・査定件数と理由を共有
・ 再発防止策を全員で考える
・ 次月の目標を設定(例:「返戻を前月比20%減」)
「よくある返戻・査定パターン集」を作る
・ 自院で頻繁に起こる返戻・査定をリスト化
・ レセプト点検時に重点的にチェック
【返戻・査定台帳の例】
| 発生月 | 患者名 | 返戻/査定 | 理由 | 対策 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年1月 | A様 | 返戻 | 保険証期限切れ | 窓口確認徹底 |
| 2026年1月 | B様 | 査定 | 病名漏れ(ビタミンB12) | 病名チェック強化 |
【 ⑤レセプト点検ソフトを活用する】
「手作業でのチェックには限界がある」
その通りです。だからこそ、テクノロジーの力を借りることが重要です。
自動チェック機能
・ 病名と診療行為の整合性チェック
・ 併算定不可項目のチェック
・ 算定回数制限のチェック
・ 点数計算ミスの検出
算定漏れの抽出
査定・返戻のリスク予測
・ 過去のデータから、査定されやすい項目を自動検出
導入のポイント
💡 「高額なシステムじゃないと効果ない」は誤解
・ 月額数千円~1万円程度のクラウド型サービスも多数
・ 返戻・査定が月に数件減るだけで、費用は回収できる
💡 まずは無料トライアルを試す
・ 多くのレセプト点検ソフトは無料お試し期間がある
・ 自院のレセプトで実際に試してから導入を判断
→ 医事課長や事務長に相談してみよう!!
執筆者のコメント

正直に言うと、私が医療事務の仕事を始めたばかりの頃、返戻・査定の多さに本当に悩みました。
「またこのミスか」と先輩に注意され、「自分は医療事務に向いていないのかも」と落ち込んだことも何度もあります。
でも、あるとき先輩が言ってくれた言葉が心に残っています。
「返戻・査定は、誰でも経験するもの。大事なのは、同じミスを繰り返さないこと」
それから、私は返戻・査定が起きるたびに、振り返り行い全員と共有を行いました。
- 何が原因だったのか
- どうすれば防げたのか
- 次回から気をつけるポイント
これを続けていくうちに、少しずつ返戻・査定が減っていきました。
返戻・査定を減らすコツは、「特別な才能」ではなく、「地道な積み重ね」です。
完璧を目指さなくていい
「返戻・査定をゼロにしなきゃ」と思うと、プレッシャーで押しつぶされそうになります。
でも、平均の返戻率は1~2%、査定率は3~5%。つまり、どんなに優秀な医療事務でも、ある程度の返戻・査定は発生するということです。
大切なのは、「前月より1件でも減らす」という小さな改善を積み重ねること。
今月の返戻が10件だったら、来月は9件を目指す。それだけでいいんです。
一人で抱え込まない
返戻・査定が多いと、「自分のせいだ」と自分を責めてしまいがちです。
でも、レセプト業務はチーム全体の仕事です。
- 医師の記載漏れ
- レセコンの設定ミス
- 点検体制の不備
様々な要因が絡み合って、返戻・査定は発生します。
だからこそ、一人で抱え込まず、チーム全体で改善に取り組むことが大切です。
「先生、この処方、病名が足りないみたいです」
「事務長、レセプト点検ソフトの導入を検討してもらえませんか」
こうやって、周りを巻き込んでいくことが、返戻・査定を減らす一番の近道だと思います。
まとめ:明日からできる3つのアクション
【① 「病名漏れチェックリスト」を作る】
今日の診療終了後、30分だけ時間を取って作成してみてください。
作成手順:
- 自院でよく使う検査・処方をリストアップ
- それぞれに対応する病名を記載
- ラミネート加工してデスクに常備
例:
| 検査・処方 | 必要な病名 |
|---|---|
| HbA1c | 糖尿病 |
| TSH・FT4 | 甲状腺機能低下症/亢進症 |
| ビタミンB12 | 末梢神経障害、巨赤芽球性貧血 |
【② 今月の返戻・査定を振り返る】
月末の今日、過去1か月の返戻・査定を全て書き出してみてください。
振り返りポイント:
✅ 何件発生したか?
✅ 原因は何か?(病名漏れ、計算ミス、算定要件不備など)
✅ 同じミスが複数回起きていないか?
✅ 来月から気をつけるポイントは?
【③ ダブルチェックの仕組みを作る】
明日から、レセプト点検に「ダブルチェック」を取り入れてみてください。
小規模クリニックの場合:
- 事務長や院長に「最終チェックをお願いします」と依頼
- レセプト点検ソフトの無料トライアルを申し込む
- 外部のレセプト点検サービスの見積もりを取る
複数スタッフがいる場合:
- 「今月は私が作成、あなたが点検」と役割分担
- 次月は逆にして、お互いにチェックし合う
さいごに
レセプトの返戻・査定を減らすことは、単なる「ミスを減らす」だけの話ではありません。
それは、医療機関の収入を守り、経営を安定させ、結果的に自分たちの雇用や給与を守ることにもつながります。
「また返戻だ…」と落ち込む日々から、
「今月は返戻が減った!」と喜べる日々へ。
その変化は、今日から始める小さな一歩から生まれます。
まずは、この記事で紹介した5つのテクニックの中から、1つだけでも実践してみてください。
それが、あなたと医療機関の未来を変える第一歩になるはずです。
